2024年1月1日に発生した能登半島地震。
現在も復興作業は続いており、住民の2次避難も完了しました。
しかしながら現在日本全国で対応が急務である空き家問題が、復興作業の妨げになっているようです。
今回は能登半島地震と空き家問題の関連性に関して、日本経済新聞の記事を取り上げつつ説明していきます。
被災地の空き家率
能登半島地震で特に被害の大きかった地域は珠洲市・輪島市・能登町の3市町です。
これらの地域の空き家率は2018年の住宅・土地統計調査では、
珠洲市20.6%、輪島市23.5%、能登町24.3%となっており、全国平均の13.6%を上回っています。
また4月30日には2023年住宅・土地統計調査の速報値が公表され、全国の空き家数・空き家率はともに2018年時点の数値より上昇していたことを考えると、
珠洲市、輪島市、能登町の空き家率は2018年時点より増加していても不思議ではありません。
空き家によって妨げられる復興作業
能登半島地震が起きた際にも大きな日がが出た原因のひとつであった空き家ですが、復興作業の妨げにもなっています。
特に2次避難が完了してからは、人が住んでいない空き家が増え、道路をふさぐ倒壊家屋の処理の妨げになっています。
一部の地域では2か月もの間、生活道路にはブロック塀が散乱、
周辺の道路は倒壊した家屋が大きくせり出したまま復興作業が進んでおらず、
倒壊家屋の処理をしようにも空き家となっているために家主と連絡が取れない、という状況になっているそうです。
損壊した空き家を公費解体する場合は、原則所有者の同意が必要ですが、空き家には所有者が不明なものも多く、
所有者不明の場合には23年4月施行の改正民法にのっとり、裁判所が選任した管理人に処分を任せる制度を活用する必要があります。
以下は「不動産買取」がメインですが、所有者不明土地の法改正について紹介しているので、併せてご一読ください!
しかし輪島市の職員によると「手間がかかる空き家より、所有者が分かる物件から先に手をつけざるを得ない」ようです。
実際に家屋を強制的に解体する代執行はコストがかかるため、行政が空き家の権利関係を調べて所有者を特定し、解体を促していく方が効率的といえるでしょう。
また被災地における空き家の増加は復興支援の妨げになるだけでなく、治安の悪化を招く側面もあります。
空き家となった住宅が増えたことで、盗難や不法侵入といった被害が懸念されており、警察は防犯カメラを設置し警戒に当たっています。
実際に2月には珠洲市の空き家に侵入して時計などを盗んだ男が窃盗の疑いで逮捕されるなど被害も出ています。
「持ち主に返してあげようと」供述した大阪府の男性逮捕(クリックで産経新聞記事に移動)
輪島市の自宅近くの避難所に身を寄せる60代の女性は、
「泥棒が心配だから様子を見に行きたいけど、日中は人通りがなく夜は真っ暗。やっぱり怖い」
と空き家が増えた周辺地域に不安を感じています。
未だ進まない解体作業
能登半島地震で破損した家屋ですが、未だ解体が進んでいないそうです。
環境省のまとめでは、特に被害が大きかった輪島市や珠洲市など能登地方の6つの市と町で2024年4月末までで行われた公費解体は131件なのに対し、
住民から受け付けた解体申請は4,364件と、申請に対して解体作業が追い付いていません。
この理由の1つに家屋の解体は私有財産の処分に当たる、という問題があります。
同じような問題は東京都 八王子駅前の一等地にある危険家屋でもあがっていましたね・・・
私有財産の処分には所有者全員の同意を書面で提出することが求められていますが、相続の際に家屋の名義変更をしておらず相続の権利を持っている親族が複数いる場合が多いです。
そのため相続人全員の同意をとることが出来ず、解体申請を出しても作業に踏み切れないのです。
環境省は相続人全員の同意が取れない等、やむを得ない人は「所有権に関する問題が生じても申請者が責任を持って対応する」といった内容の宣誓書を提出することで解体を行えるという考えを示しています。
しかしトラブルを避けるためにも、現在能登地方の6つの市と町では宣誓書での代用を認めておらず、被災者の相談に応じている石川県司法書士会では自治体に対して柔軟な対応を訴えています。
同司法書士会には1月以降、能登半島地震で被災した人たちの生活に関する困りごとに無料で相談に応じていますが、寄せられた相談の8割は公費解体に関する相談だそうです。
公費解体が進まずに困っている方は倒壊した家屋の所有者だけではありません。
倒壊家屋の隣にある家の所有者も、公費解体の滞りに頭を抱えています。
倒壊した家屋が自分の家にもたれかかり、修繕作業などが進められない、といった問題を抱えているようで、隣の家屋の解体作業が進まないせいで自分も家に戻れない、といった問題もあるようです…。
所有者不明土地の空き家解体も課題
今回の能登半島地震の時のみならず、東日本大震災や熊本地震の時でも所有者不明の空き家は大きな問題となりました。
所有者がわからない空き家は同意が取れないため、公費解体が行なえず、震災からの復興の妨げになっています
事態を改善すべく、昨年4月に施行された制度が「所有者不明建物管理制度」です。
これにより、調査を尽くしても建物の所有者がわからない場合は市町村などが地方裁判所に申し立てを行い、裁判所の許可を得たうえで公費解体を行うことができます。
制度を活用するには「半壊」や「倒壊」となった空き家を特定したうえで、所有者の調査を進める必要があり、環境省の職員は倒壊した家屋の多い地域を訪問し、空き家の特定作業をしています。
この制度が導入されて以降、能登半島地震は初の大規模災害ですので、空き家調査に必要なマンパワーの確保など、国や自治体の支援が期待されます。
おわりに
今回の能登半島地震では、地震発生時から復興作業に至るまで、空き家の存在が大きな悩みのタネとなりました。
これは能登半島に限った話ではありません。
その他の地域でも少子高齢化・都心部への人口の一極集中化は進んでおり、空き家率は年々上昇しています。
他の地域でも大地震が起きれば同じような問題を抱えることは必至でしょう(地震自体、再び起きてほしくはないですが)。
このような事態を防ぐためには使用予定のない空き家を放置せずに、売却をするなどして手放すことが重要です。
前年5月には同じ活断層で大きな地震も発生
2024年1月に起こった大震災と同じ活断層で、2023年5月5日にも大きな地震が起こっておりました。
地震が起こる前日まで石川県のお隣の富山県にいた私は、驚くとともに、偶然地震について夫と話しておりました。
以下の空き家ジャーナルで、石川県の地震の特徴と併せて綴っておりますので、ぜひご一読ください。
東京空き家相談協会は、一都三県を中心に全国で「相続・空き家の総合相談窓口」として活動している非営利団体です。
相談ヒアリングから現地調査、解決策のご提案から提携している専門家のご案内まで、全て無料で行なっておりますので、ご活用ください!