亡くなった親の遺産相続手続きがはじまるけど、相続した財産はいつもらえるんだろうか…?
とはいえ、他界したばかりというときに「いつもらえるの?」などと訊くのは少々気が引けるのも事実です。
人生でそう何度も経験することではない相続。
一度経験した場合でも、今回の相続は前回とまったく同じということではないでしょう。
今回の解説内容
- 手続き方法別の財産のもらい方
- 相続手続きの注意点
- 相続手続き終了までにすぐお金がいるとき
相続財産は最短2週間ほどで受け取れる
相続財産をいつもらえるかについては画一的な答えはなく、以下の内容次第で全部変わります。
- 財産内容
- 相続人数
- 手続き方法
ほどかかります。
遺産を受け取るには相続手続きをすべて終える必要がありますが、遺言書など必要な書類の用意に不備があるかや、相続人数は何人いるかなど個々の状況で変わります。
手続き方法や遺産の種類によりますが、必要書類を提出し、不備などなく無事に相続手続きが完了すれば最短2週間ほどで資産を受け取れます。
以下は状況に対する相続遺産受け取り時期の目安です。
しかし書類ひとつで受け取れる時期の見通しが大きく変わり、場合により手続き完了まで数年かかることもあります。
- 遺言書有・検認不要:相続開始から約2週間~
- 遺言書有・検認必要:相続開始から約3か月~
- 遺言書無・相続人が一人:相続開始から約2か月~
- 遺言書無・相続人が複数人:相続開始から約3か月~
- 被相続人が遺言を公正証書遺言で遺していた場合
- 法務局による自筆証書遺言の保管制度を利用していた場合
上記の場合は家庭裁判所での確認手続き(遺言書の存在と内容を確認する手続き)が不要になり、遺産を一番早く受け取れます。
遺言内容にしたがい遺産の名義変更ができるため、最短で2週間ほどで遺産を受け取れる可能性も出てくるでしょう。
相続手続きの流れ
家族や親族が亡くなって相続が生じた際、すぐに遺産を受け取れるわけではありません。
故人が遺言書を遺していたかどうかや、相続人は誰かなどをまず確定させなければいけません。
- 遺言書の有無を調べる
- 遺言書の種類次第では検認手続きをする
- 相続人調査をする
- 相続財産調査をする
- 所得税の準確定申告をする
- 遺産分割協議をし、遺産分割協議書を作る
- 資産ごとに名義変更手続きをする
- 相続税申告をする
相続は遺言書の確認にはじまり、相続人同士での遺産分割協議を終えて預貯金などの相続遺産を使えるようになるまで、滞りなく進んでも3ヵ月程度はかかると見込んでおいた方がよいでしょう。
もらえる時期を左右する要因たち
- 遺言書の有無
- 相続人の人数
- 遺産の内容
それぞれ次項で確認しましょう。
遺言書の有無
遺言書がある場合はその内容通りに遺産を分割するため、遺言書がない場合に比べて遺産を早く受け取れます。
相続人の人数
相続人の人数が多いほど相続した遺産をどう分けるかについての意見がまとまりづらく、時間がかかる場合が多いでしょう。
遺産の内容
現金や預貯金だけでなく、遺産に不動産や株式などが含まれる場合、不動産登記や株式の名義変更などの手続きが要ります。
遺産が現金のみの場合と比べ、遺産の受け取りが遅くなる可能性が高まります。
もらえる時期は手続き方法次第
相続手続きを始めてから実際に遺産を受け取れるまでの期間は、手続きをどう進めるかで変わります。
たとえば銀行口座にある遺産を引き出す手続きをする場合、遺言書もしくは遺産分割協議書が必要書類となります。
- 検認の手続きにかかる期間
- 申し立て後約2週間~2か月程度。
- 遺産分割協議が必要な場合も、相続人同士でモメるほど長引き、その分手続きが遅くなります。
進め方2つのパターン
遺産相続手続きの進め方は大きく分けて以下の2つのパターンがあります。
どちらのやり方で進めるかは、遺言書の有無で変わります。
- 遺言書有・その内容に沿って進める
- 遺言書無・相続人の間で遺産分割協議(遺産の分割の話し合い)で進める
相続が始まったらまずは遺言書があるか、探すことから始まります。
遺言書内容に沿って進める
ここでのポイントは、遺言書の開封時の検認の有無により相続手続き開始のタイミングが変わること、また遺言執行者(遺言書の内容を確実に実行する人のこと)が選任されている場合、手続きにかかる時間は執行者の進め方にかかっています。
- 自筆証書遺言書
- 公正証書遺言書
- 秘密証書遺言書
このうちどの遺言書に当たるかにより、相続手続き開始のタイミングが変わります。
自筆証書遺言書の場合
自筆証書遺言書があったときはその場で開封せす、発見したままの状態で家庭裁判所に持参し、家庭裁判所による検認を受けてから遺言書の内容を確認する流れになります。
- 自筆証書遺言書保管制度を活用している場合は検認の必要がないため、滞りなく相続手続きを始められます。
公正証書遺言書の場合
こちらは作成時に遺言者が口述した内容を2人以上の公証人が立ち会って書き取り、書面にした遺言書です。
- 公証人の手で作成された遺言書であるため、検証の必要がありません。
- その分スムーズに相続手続きを始められます。
公正証書遺言の場合公証人の手で作成された遺言書であるため、検認の必要がありません。
その分スムーズに相続手続きを始められます。
秘密証書遺言書の場合
文字通り遺言内容を秘密にした方法です。
ほかの遺言と比べマイナーな遺言ですが、ひと言でいえば費用面や保存の確実性などから「公正証書遺言と自筆証書遺言の合いの子」のような存在です。
注意事項
検認は遺言書発見後即日検認ではなく、申し立て後検認日まで約2週間~2か月ほどかかります。
また、検認は遺言書の有効性を確認するものではありません。
遺言執行者が選任されている場合、その人が手続きを進めることになるため、事の進捗具合はその執行者次第となります。
遺産分割協議書の内容に沿って進める
被相続人(亡くなった方)の遺産を相続人全員でどう分けるかの話し合い(遺産分割協議)を始めるタイミング次第で遺産相続手続きを始める時期が変わります。
ノンビリ構えちゃいられない…協議はお早めに

と、ノンビリ構えていたことにより、遺産相続の手続きはおろか、相続税申告の手続き開始も遅くなり、気づいたころには「相続開始から10ヵ月しかない」という状況に陥りました。
期限に間に合わなくなる事態に…。
このような事態を避けるためにも、以下の注意事項を念頭に置いておきましょう。
- 相続放棄や限定承認;相続開始後3ヵ月以内
- 被相続人の準確定申告:相続開始後4ヵ月以内
手続きを後回しにして多額の借金があるのに相続放棄できなくなったともなりかねません。
相続関連は期限に注意!
相続は期限に注意すべき項目が多く、所有財産に不動産の割合が多い人はとくに要注意です。
相続財産は早く確定させなければならないのに対し、10ヵ月はあっという間。
準備しないと痛い目に遭います。
もらえる時期は財産内容次第
遺産をもらえる時期は手続きの進め方に加え、財産の種類によっても変わります。
不動産のほか、相続財産には預貯金や有価証券などプラスの財産以外にも負の財産(借金など)もある場合があります。
遺産相続は財産ごとに手続きが決められており、その方法によっても受け取り時期が異なります。
預貯金の払い出し
- 相続人の誰かが口座を引き継ぐ(名義変更)
- 口座を解約する
遺産分割協議など必要書類を提出すると凍結が解除され、相続人の指定口座にお金が払い戻しされます。
どちらにせよ、金融機関での手続きをする必要があります。
取引金融機関ごとに必要書類も異なるため、まずは窓口に相続があった旨を伝えて準備してください。
- 手続き完了から遺産受け取りまでにかかる期間
- 10日~2週間程度
- 遺産分割協議が必要な場合も、相続人同士でモメるほど長引き、その分手続きが遅くなります。
金融機関によっては「相続手続きの流れ」について、ホームページに掲載していることがあります。
被相続人が契約していた金融機関のページを確認してみるといいでしょう。
以下は参考例として、いくつか金融機関公式サイトより引用させていただきました。
車の受け取り
他人が持ち主であるものを勝手に売ることができないためです。
仮に名義変更をせずに相続した車に乗り続けた場合、以下のような不都合が起こる可能性があります。
- 売却や廃車にできない
- あとあと手続き時に書類をさかのぼって入手するのが難しい
- 事故を起こした場合に任意保険が使えない
- 自賠責保険を超過する金額が補償されない
こうした事態を防ぐためにも、相続時には車の名義変更をする必要があります。
- 車の名義変更時に車の名義が誰になっているか確認
- 車を引き継ぐ新しい持ち主を決める
- 名義変更の手続きをする
上記の手順は、どのような状況の方でも全員必須の要素となります。
これにて、新たな所有者へ名義変更ができ、車を相続できたことになります。
その後、相続人がその車をどう扱っていきたいか(引き続き使うのか、売るのか、廃車にするのか)で変わります。
名義変更の流れ
- 必要書類の準備(車の置き場所が変わる場合は警察署で車庫証明を取得します。発行まで約1週間程度)
- 登録手数料を支払う
- 車検証の交付
- 税金の申告・納付(自動車取得税がかかる場合)
- 名義変更完了
不動産の名義変更
法務局で行ないます。
不動産の名義変更(相続登記)には書類などの準備を含めると約1ヵ月~2ヵ月程度かかります。
一般的な手続きの流れは下記の通りで、登記完了後、不動産の活用や売却が可能となります。
- 遺言書・遺産分割協議書・固定資産税評価証明書などの必要書類を揃える
- 不動産の所在地を管轄する法務局に書類を提出する(登記申請)
- 登記完了
- 登記識別情報通知を受け取る
有価証券の口座移管
株式や債券、投資信託などの有価証券も、基本的には銀行と同じ流れで行ないます。
- 相続人の証券口座を開設する(口座を持っていない場合)
- 有価証券の名義人を相続人に変更する
- 相続人の口座へ移管する
口座のある証券会社に連絡をし、遺産分割協議書などの必要書類を提出すると相続人名義の証券口座に有価証券が移管されます。
移管手続きにかかる時間は1ヵ月程度見ておくとよいでしょう。
貴金属
被相続人が金・銀・プラチナなどを現物で保管していた場合はそれを相続人が引き継げばよく、特段どこかへ相続手続きする必要はありません。
貴金属を現物で持っていた場合、若干ネックになるのはその評価方法です。
証券会社や貴金属の会社でこれらの取引(保管)をしている場合は価格の証明の確認が比較的簡単にできますが、被相続人が現物を持っていた場合は価格の証明に手間がかかります。
純金積み立てなど、貴金属会社や証券会社の口座で保管・取引をしていた場合、相続手続きを貴金属会社、証券会社に申請する必要があります。
申請時の必要書類は銀行や不動産の相続手続きとほとんど変わりはありません。
また、相続税の計算時に貴金属も課税対象となるため、どの金属が相続財産で、誰が相続するかを明確にしておく必要があります。
相続手続き終了まで待てない!すぐにお金がいるとき
すべての相続手続きが終わるまで遺産を受け取れませんが、預貯金の仮払い制度などを活用することによって遺産を早く受け取ることもできます、
死亡保険金の請求
被相続人が生命保険に入っていた場合、保険金の受取人に指定されていれば死亡保険金を請求できます。
保険会社に被相続人が亡くなった旨を連絡すると請求書と必要書類が送られてくるため、必要事項を記入して返送します。
- 被相続人の住民票、除籍謄本
- 死亡診断書または死体検案書
- 保険証券
- 受取人の戸籍謄本
- 受取人の印鑑証明書
死亡保険金の請求時には一般的にこれらの書類が必要です。
手続きが難なく進めば、保険会社へ連絡後およそ2~3週間ほどで死亡保険金を受け取れます。
(死亡保険金の請求にあたり調査や照会などが必要な場合はそれ以上の期間を要する場合があります)。
預貯金の仮払い制度
- 遺産分割が成立する前でも預貯金を一定額まで出金できる
- 被相続人の葬儀費用や差し迫った生活費の支払いなどでまとまったお金が要るときに活用できる
- 相続人のうちの一人が手続きすればいいので、相続人全員の同意を得る必要がない
2種類の仮払い制度があり、それぞれ手続き場所・必要書類・上限額が異なります。
- 家庭裁判所の判断を経ず払い戻しができる制度
- 家庭裁判所による仮分割の仮処分
それぞれ、手続き場所・必要書類・上限額が異なります。
手続きを金融機関の窓口でする場合は150万円までしか出金できませんが、時間や費用をかけずに済みます。
一方、家裁で手続きする場合は時間や費用がかかりますが、いくらでも払い出しができます。
預貯金再建の仮分割の仮処分制度
預貯金債権の仮分割の仮処分制度とは、所定の条件を満たすと預貯金全額もしくは一部を引き出せる制度です。
以下の条件を満たせば、家庭裁判所に仮分割の仮処分の申し立てができます。
- 相続債権の弁済、相続人の生活費ねん出など預貯金を出金する必要性があること
- 遺産分割の調停または審判の申し立てがされていること
- ほかの相続人の利益を侵害しないこと
- 申し立て手続きに必要な書類
- 申立書(当事者目録・遺産目録を添付)
- 遺産内容が分かる書類(預金通帳・不動産の全部事項証明書など)
- 住所や戸籍関連の書類
- 仮分割の必要性に関する資料(家計収支・申立人や同居家族の収入資料、民法909条の2に基づく払戻証明書、報告書、陳述書など)
手間や費用がかかりますが、預貯金の仮払い制度より高額なお金を引き出せます。
相続手続き完了前に出金する場合の注意
相続手続きが完了する前に被相続人の預貯金を出金する際は、以下2点に注意しましょう。
- 相続人間でのトラブル誘発
- 単純承認と見なされ相続放棄できなくなることも
相続人間でのトラブル誘発

被相続人の用事のためにお金が必要になり、預貯金を引き出したところ、ほかの相続人から「なんで同意もなく勝手に引き出したんだ」、「私用で使い込むために出金したのでは」などと言われ、大きなトラブルとなりました。
遺産分割が終わるまでは、被相続人の財産は相続人全員の共有財産です。
トラブル回避のため、預貯金は必ず相続人全員の同意を得てから引き出すようにしましょう。
また、引き出した場合は私用のために使い込んだわけではないことを証明するため、領収書を保管しておきましょう。
単純承認と見なされ相続放棄できなくなることも
- 単純承認とは
- 現金や預貯金などプラスの財産の範囲内で、借金など負の財産を相続することです。
引き出したお金を私用のために使ってしまうと単純承認をしたと見なされ、相続放棄(財産を相続する権利を放棄すること)ができなくなることがあります。
後々、もし多額の借金があることが発覚した場合、相続放棄したくてもできない可能性があるため十分注意しましょう!
おわりに
裕福な人しか相続税を納めていなかった古めかしい制度の名残で、相続はとてつもなく面倒な作業です。
税制はさらにシンプルであるべきなのに、あまりにも複雑にしすぎです…。

と思っても、死期が迫っている人にそんなことは求められません。
また、年金など自分がこれからどうなっていくかも分からないのに、相続まで頭が回らないのが現状という方も多いのではないのでしょうか?
- 市販の遺言書キットを活用
- 親世代が率先して余計な不動産をもたないようにする
- 取引のある金融機関リストを作る
- 資産リストを作る
- 相続を手がけていて比較的良心的な料金設定をしている税理士などをネットなどで調べておく
自分のためにもなるべく先を見越し、法律や手続きを知り、できることから納得のいく準備をしておくことは悪いことではありません。
税理士含めて専門家と連携している当協会へ無料相談してみませんか?
最短即日、お悩みが解消できます!