「宗教の自由」という言葉があるように、
どのような信仰心を持っていても、その人の自由なので問題はないのですが、「新築信仰」だけはお勧めできません。
お勧めできないとは言ったものの、新築信仰は日本人に深く根付いているものであり、簡単に否定することはできないものです。
現にマンション市場を見ても、中古マンションと新築マンションでは、同じエリアにおいても価格に雲泥の差があります。
それだけ「新築」という言葉の持つ意味合いは大きいものなのです。
しかしながら、そろそろ我々日本人はこの新築信仰から脱却せねばなりません。
今回はこの新築信仰に関して、また新築信仰が日本にもたらす未来について解説します。
新築信仰はなぜ生まれた?
新築信仰が生まれた理由の一つに、日本政府による「新築ひいき」のようなものが挙げられるでしょう。
固定資産税の特例措置や住宅ローン控除、登録免許税や不動産取得税など、あらゆる部分に新築物件を優遇するような措置が見受けられます。
日本では、総務省の産業連関表に基づき、新築住宅が1つ売れればおよそ2倍の経済波及効果(生産誘発効果)があるとされ、
バブル崩壊以降は景気が悪くなるたびに新築住宅優遇策がとられてきました。
このような政策もあり、日本では中古住宅の流通が少なく、新築住宅の流通が盛んである点も、この信仰心を強めた理由の1つでしょう。
実際に日本の中古住宅の流通シェアは2018年で14.55%となっています。
欧米諸国と比較するとアメリカ(81%)、イギリス(85.9%)、フランス(69.8%)となっており、
日本の中古住宅市場はお世辞にも大きいとは言えないでしょう。
新築信仰がもたらした空き家問題
新築住宅が1つ購入されるということは、単純計算で1つの中古住宅(空き家)が生まれるということです。
したがって新築信仰のある日本では、空き家が増加の一途をたどっています。
日本の空き家~現在と未来~
総務省が5年おきに行っている「住宅・土地統計調査」によると、2018年時点で日本の住宅総数は約6240万戸に対し、居住世帯数は5400万となっており、住宅の方が16%程多い計算になります。
居住世帯のない住宅の多くは空き家とされており、
別の統計では日本の空き家は約879万戸と、
住宅総数に対し13.6%が空き家であると言われています。
この13.6%という空き家率は1988年時点から4.2ポイントも増加しているもので、
住宅数に換算すると相当な数の住宅が空き家になっていることがうかがえるでしょう。
このままいくと、将来は非常に暗いです。
国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の世帯総数のピークは2023年の5419万世帯で、
その後は減少に転じ、2040年には5076万世帯になると推計しています。
空き家の解体や活用が進まなければ日本の空き家率はさらに増していくでしょう。
空き家が増えれば廃墟となるような物件が増え、犯罪リスクの増加や害獣発生、最悪の場合地震による倒壊といった結末が待ち構えています。
日本の未来のためにもそのようなリスクは今のうちに排除すべきです。
唯一ポジティブな点は空き家の除却率が2008年~2012年(30%)に比べ、2013年~2017年(62.2%)と大幅に増加している点です。
今後も除却率を増やせれば、日本の空き家問題は改善するかもしれません。
日本の空き家が減らない理由
空き家の除却率が上がるなど、徐々に空き家に対する意識が高まりつつある日本ですが、空き家はまだまだ減りません。
これには大きな理由があるのです。
詳しくは次項をご覧ください。
日本の空き家が減らない理由①解体費用が高い
空き家の解体費用が工面できないという理由は、単純な理由ですが、空き家の処分のハードルを大きく上げています。
一部市町村では除却費用の助成を行う等、
徐々に空き家処分のハードルを下げるための取り組みを行い始めましたが、地域によってまだまだ差があるように感じます。
空き家解体の支援は空き家対策に向けたポイントの1つといえるでしょう。
日本の空き家が減らない理由②中古住宅市場が小さい
先述の通り、日本の中古住宅市場はとても小さいものです。
まだまだ「新築=完璧、新築=価値が高い」といった新築信仰は根強く、当面の間この信仰は廃れないでしょう。
また、住宅を販売する側の情報開示にも問題があると言えるでしょう。
特に中古の木造住宅は隠れた不具合などがきちんと開示されずにトラブルになるケースも多いのです。
住宅を販売するメカニズムといった、根本的な仕組みを変えなければ、中古住宅市場の成長は見込めません。
まとめ
新築信仰を捨てろとは言いませんが、中古物件や空き家にも目を向けるべきです。
新築を続け、中古物件をないがしろにするほど、日本の空き家問題は大きくなります。
空き家問題をなくし、空き家に悩まされない未来をつかむためにも、中古住宅市場や空き家物件に目を向けてみてはいかがでしょうか。
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