皆さんはドラえもんの「もしもボックス」というひみつ道具をご存じでしょうか。
「もしも~だったら」と電話を掛けると、電話口で言ったとおりの世界を作れるという道具です。
もちろんドラえもんはフィクションなので、そんなことは実現不可能ですが、いま起きている問題に目を向け「もしも~だったら」と自分で思考することは非常に大事なことです。
今回は今日本で問題になっている空き家問題に目を向け、「もしも空き家がこのまま増え続けたら」どうなるかを考えてみましょう。
日本の空き家問題の将来
現在日本国内には空き家が約849万戸ほど存在しており(2018年土地・統計調査の結果による)、2030年には空き家の数は2000万戸、空き家率は30%になると言われています(下記図参照)。
空き家が増えると地震・火災などによる被害のリスクが大きくなりやすく、害虫・害獣の発生や住居への不法侵入が増えることで、周辺地域ごと資産価値が低下してしまう可能性があります。
これ以上空き家問題を深刻化させまいと、2015年に空き家対策特別措置法を施行、2023年12月にはこの法律を改正しました。
この法律により、空き家対策に一定の効果がみられてはいられるものの、まだまだ空き家問題は顕在化しています。
※こちらは2013年当時のデータなので、2018年、2023年の予測値と実際の空家数は相違がある場合があります。
空き家率が30%を超えるとどうなる?
もしも、空き家率が30%を超えるとどうなるのでしょうか?
30%というと、大体家3軒のうち1軒は空き家ということになります。
想像しただけでも恐ろしいですが、明海大学不動産学部教授の齋藤氏は、「空き家率が30%を超えると自治体は財政破綻する」という発言をしており、かなり深刻であることがうかがえます。
実際に北海道夕張市は2007年に、アメリカミシガン州のデトロイトでは2013年に財政破綻が起きており、それぞれ空き家率は33%、29.3%でした。
それではどのようなメカニズムで財政破綻が起こるのでしょうか?
次項から、空き家率が30%を超えることで発生する具体的な現象を解説します。
空き家率が30%を超えると①行政の税収が減り、支出が増える
空き家が増えてまず起こることは、税収の減少と支出の増加です。
不動産にかかる税金は主に毎年発生する固定資産税と不動産を売却した際の譲渡所得税、登録免許税や、不動産相続時の相続税が挙げられます。
空き家が増え、放置されると空き家やその周辺の資産価値が下がり、税額が減少したり、空き家そのものの流通が減って譲渡所得税や登録免許税の税収が減ります。
更に空き家の放置が増えていくと、そもそも税金を課税すべき人が見つからない、ということも起こりかねません。
その一方で、放置された空き家は災害リスクがあることから、行政が代執行によって改善措置を施さなければならなくなり支出が増加していきます。
こうして行政の財政は徐々にひっ迫されていくのです。
空き家率が30%を超えると②街がスラム化する
空き家が増えることによって周辺地域の治安が悪くなり、地域としても人気がなくなっていきます。
そうなると地域住民の中から他地域に移住する人が出たり、逆に外部からの人口流入がなくなります。
街はゴーストタウン、スラム街と化し、ますます地域人口は減少します。
これは行政の財政にも影響をもたらし、街の人口が減ることで住民税などの税収が減少していきます。
空き家率が30%を超えると③行政の財政が破綻する
空き家率が増え、上述のような現象が深刻化するころには行政の財政は既に破綻しているでしょう。
スラム化した街を何とか立て直したいが、税収がないから立て直すお金がない→何もできず街がさらにスラム化し、財政がひっ迫 という悪循環を繰り返し、行政はボロボロになっていきます。
これが将来日本全土で起こる可能性があるということです。
先述した土地・統計調査の結果では2030年には空き家率が30%を超えると予想されています。
夕張市やデトロイトでの財政破綻が日本という国単位で起こることも有り得るのです。
さいごに
現実世界に「もしもボックス」はありません。
「もしも空き家がなかったら」と考える前に空き家の所有者は空き家の放置をやめ、各自治体は空き家所有者への働きかけを強化すべきでしょう。
現在空き家の将来に困り、放置してしまっている方はぜひ東京空き家相談協会にお問い合わせください。
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