相続税の申告には相続の開始(被相続人が亡くなったこと)があったことを知った日の翌日から10ヵ月という期限があります(相続税法27条)。
申告期限までに申告書を提出しないと、無申告としてペナルティの対象となり、
申告期限を過ぎて申告書を提出することによって期限後申告としてペナルティの対象となります。
無申告が続くと税務調査の対象となることもあるため、相続税は必ず申告しましょう。
今回は、相続税の申告について以下を解説します。
- 相続開始~相続税の申告までの流れ
- 相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?
- 申告期限ギリギリになってしまった場合の対処法
- 相続税がかからない場合の手続き
- 相続税の申告期限のポイント
- 相続税の申告に関するよくある質問
相続税の申告は10ヵ月以内!
相続税の申告は10ヵ月以内に!
- 相続税の申告書は、相続の開始(被相続人が亡くなった)ことを知った日の翌日から10ヵ月以内に納税地の税務署長に提出することとされています。
- 応当日とは
- 例えば、1月20日に亡くなった方の相続税の申告期限は、10ヵ月後の同じ日である11月20日となります。
相続税の申告期限
10ヵ月と聞くと長く感じるかもしれません。
しかし実際は、被相続人の葬儀や四十九日の法事が終わるまで忙しなく動き続け、いざ税理士に相談し相続税申告をする頃には数ヵ月経っているという状態になります。
- 申告に必要な戸籍謄本などの書類を取り寄せたり、財産評価のために必要な手続きのことを考えると10ヵ月間は思いのほか早く過ぎます…
そもそも相続税申告とは?
そもそも、相続税申告とはどんなことをいうのでしょうか?
- 相続税申告とは
- 人が亡くなった際に相続などにより財産を取得した人が、相続人や財産の情報を税務署に申告すること。
また、自身が引き継いだ財産を報告するだけでなく他の相続人が引き継いだ財産も含めて、相続人が共同で申告します。
申告期限の起算点は?いつから10ヵ月?
相続税申告の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日から起算します。
「被相続人が亡くなったことを知った日」がよくわからない…
と、気になりますよね。
被相続人と同居している場合などは、亡くなったことを知った日は原則として死亡日です。
しかし、以下のような場合は 死亡日 = 亡くなったことを知った日ではないことがあります。
- 別居し、疎遠となっており、死亡の事実を知らなかった場合
- 海難事故などで失踪宣言があった場合
- 相続人の廃除に関する裁判の確定があった場合
海難事故での死亡の場合、遺体が見つからないと失踪宣言をされますが、その後「認定死亡」という手続きがとられます。
例えば海難事故が3月31日に起こり、4月1日より海上保安庁が行方不明者を捜索した後、行方不明者の住所地の市区町村に対して死亡の報告を行ないます。
報告後、遺族が市区町村に死亡届を提出することになりますが、この場合、相続の開始があった日は、海上保安庁が死亡の報告を市区長に対して行なった日となります。
具体例で解説
以下、具体例をあげて解説します。
相続税の申告期限:令和7年3月10日
相続税の申告期限:令和7年2月28日亡くなったのが4月29日〜30日の場合、10ヵ月後が2月末となる場合2月28日(うるう年の場合、2月29日)となります。
期限が土日・祝日にあたる場合
10ヵ月後の応当日が土日祝日にあたる場合、その翌日以降となります。
相続税の申告期限:令和7年5月18日(月曜日)
(5月16日が土曜日、5月17日が日曜日であるため)
相続の開始~相続税の申告期限までの流れ

10ヵ月後に申告期限を迎えるまでの押さえておくべき手続きです。
以下、10ヵ月の流れに沿って解説いたします。
相続開始から相続税の申告期限までの流れ
- 相続の開始
- 相続放棄は3ヵ月以内
- 準確定申告は4ヵ月以内
- 相続税の申告書の提出
相続の開始
被相続人の死亡によって相続が開始します。
相続人の申告期限である相続人の申告期間である10ヵ月のスタートは、相続の開始があったことを知った日の翌日となります。
相続放棄の手続き期限は3ヵ月以内
- 相続放棄とは
- 泣くなった方の財産(預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金や保証義務などのマイナスの財産も)を一切相続しないことを、家庭裁判所へ申し立てて決める手続きです。
- この手続きを行なうことで「最初から相続人ではなかった」とみなされます。
後順位の相続人は相続税の申告が必要となる場合があります。
相続放棄をする場合、その放棄をした人は相続税の申告は不要です。
準確定申告は4ヵ月以内
- 準確定申告とは
- 亡くなった方に所得があった場合相続人は税務署に所得税の申告をする必要があります。
- このことを所得税の準確定申告といいます。
所得税の準確定申告とは、亡くなった日の翌日から4ヵ月以内が申告期限とされています。
亡くなる直前まで個人事業主として事業を行なっていた場合や、賃貸アパートなどを所有していて不動産所得がある場合には、所得税の準確定申告が必要となります。
相続税の申告期限よりも早く到来しますので、相続税申告のための財産の把握とともに所得税の順確定申告の準備も同時に進めておくことをおすすめします。
相続税の申告書の提出
10ヵ月以内に相続税の申告書を税務署に提出します。
相続税の申告期限を過ぎたらどうなる?
相続税の申告書は申告期限を過ぎても提出することが可能です。
期限後申告に提出することを「期限後申告」といいます。
期限後申告の場合、付帯税のうち無申告加算税や延滞税の対象となります。
- 付帯税とは
- 支払う相続税とは別にかかってきますので、申告期限を超過したことによるペナルティや罰金というイメージです。
付帯税の税率は相続税の本税に対しての税率になります。
したがって、納めるべき相続税が提出ほど付帯税の金額も大きくなります。
| 付帯税の種類 | 内容 | 税率 |
|---|---|---|
| 無申告 加算税 |
申告期限までに申告書を提出しなかった場合 | 5%~30% ※自主的に期限後申告書を提出したか、税務調査後に申告書を提出したかなどにより税率が異なる |
| 過少申告 加算税 |
申告書は提出したが、財産の申告漏れなどにより、申告した税が少なかった場合 | |
| 税務調査前に自主的に期限後申告を行った場合 | なし | |
| 税務調査の通知後に修正申告した場合 | 5~10% | |
| 税務調査を受けて修正申告した場合 | 10%~15% | |
| 延滞税 | 相続税の納付が遅れた場合(令和6年分の税率) | |
| 申告期限から2ヵ月以内の部分 | 2.4% | |
| 申告期限から2ヵ月を超える部分 | 8.7% | |
| 重加算税 | 財産を意図的に隠ぺいするなど悪質な場合 | |
| 過少申告の場合 | 35% | |
| 無申告の場合 | 40% | |
申告期限ギリギリになってしまった場合はどうする?

相続専門の税理士や、相続案件に強い弁護士に相談しましょう。
申告期限ギリギリになってしまった場合、期限後申告をすると無申告加算税などのペナルティ対象となってしまいます。
申告後の財産調査により、申告していない財産が発見されたなど申告した税額が少ない場合には、修正申告を行ない、申告した税額が多すぎた場合には、更正の請求をする必要があります。
相続税の申告期限の延長は認められる?
例外として以下の条件を満たす場合に限り、2ヵ月の申告期限の延長が認められています。
- 申告期限前1ヵ月以内に死亡退職金の支給額が確定した場合
- 認知などにより相続人に異動があった日から1ヵ月以内に申告期限がある場合
- 相続人となるべく胎児が申告期限後に生まれた場合
いずれも、本来の申告期限から2ヵ月延長されるのではなく、それぞれの事由が生じた日から2ヵ月以内となります。
また、災害その他やむを得ない理由による、申告期限までに申告できないことを個別に税務署長に申請し、その申請を受けることにより、災害などの理由がやんだ日から2ヵ月以内となりますので、ご注意ください。
申告期限の延長については、特例的な取り扱いですので、ほとんど利用することはないと考えた方が安全です。
相続税がかからない場合の手続き
相続税がかからない場合、相続税の申告手続きは必要ありません。
例えば、遺言書がない場合に不動産や預貯金、株式などを取得する場合遺産分割協議を行なう必要があります。
また、借金があるなどのマイナスな理由から遺産を一切取得しない場合は相続放棄を進めます。
相続税を申告しないとバレる?
- 税務署にはKSK(国税総合管理)システムをはじめとする強力な連携システムや情報収集力があります。
- 納税者ごとの申告状況や納税実績などのデータを一元管理するシステムであり、被相続人の死亡届が役所で受理された時点で税務署へ死亡が伝えられ、税務署は相続開始を知ることができます。
- 遺産に不動産がある場合、税務署は相続登記の情報から不動産の相続を把握することができます。
また、税務署は、相続人の了承を得ずとも強制調査する権限が与えられています。
金融機関が預金口座や証券口座の情報などを税務署へ提供することが義務づけられています。
これにより、税務署は亡くなった方の預金口座や証券口座を把握し、相続税の申告漏れがないかチェックすることができます。
その後の「面倒」や「税金を払いたくない」などの理由で申告せずにいると政府からペナルティを受ける可能性も高まります。
相続税の申告期限のポイント
相続税の申告期限は、以下のポイントを押さえましょう。
申告期限のポイント
- 未分割であっても必ず申告期限内に申告する
- すでに申告期限を過ぎてる場合の対応
- 納税資金の不足が見込まれる場合は早めの準備を
- 相続専門の税理士に相談する
- 相続に強い弁護士にも相談する
未分割であっても必ず申告期限内に申告する
遺産分割について親族間で揉めており、遺産分割協議がまとまらない場合であっても、相続税の申告期限までに相続税の申告書を提出しましょう。
この場合、相続財産は法定相続分により相続したものとして申告しますが、相続税の特例である「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」など、相続税額が少なくなる特例が適用できません。
しかし、期限内申告と同時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することにより、当初の申告後に更正の請求書を提出して、各種特例の適用を受けることができます。
すでに申告期限を過ぎてる場合の対応

すでに相続税の申告期限を過ぎてしまっている場合でも、課税される付帯税を軽減するために速やかに申告しましょう。
なんらかの事情があり申告期限を過ぎている場合、個別申請による申告期限の延長ができないか、税務署や専門家に相談するのも手です。
納税資金の不足が見込まれる場合は早めの準備を
納税ができない場合であっても、申告書は提出する必要があります。
その際には、延納(相続税を分割払いすること)や物納(現金以外の財産で納税すること)ができないか、税務署や専門家に聞いてみましょう。
延納や物納は、申告期限までに必要書類を用意する必要があります。
納税資金の不足が危ぶまれる時には、相続税の申告同様、早めに確認しましょう。
相続専門の税理士に相談する
相続税の申告が必要なことを認識していなかったなどで申告期限ギリギリとなってしまいそうな場合には、相続専門の税理士に相談しましょう。
相続専門の税理士であれば、一緒に対策を考えてくれます。
相続に強い弁護士にも相談する
相続税の申告には、遺産分割協議が必要になります。
最初から税理士に依頼した場合、遺産分割協議については相続人自らまとめる必要があります。
遺産分割協議について、法的な側面からのアドバイスを受けることはできません。
遺産分割協議についてすこしでも不安のある方は、複数の弁護士と連携している当協会へご連絡ください。
相続税申告に関するQ&A

最後に、相続税の申告に関する、よくある質問とその解答をご紹介します。
相続税申告が必要な人には税務署から何か通知が来るの?
税務署は相続税の申告が必要であるかどうかわかるほど個人の財産を把握していないからです。
しかし、亡くなった方の戸籍情報から相続税のお尋ねという書面が税務署から送られてくることがあります。
これは相続税の申告が必要な方に送っているわけではなく、
市区町村に提出された死亡届をもとに、亡くなった方の親族に発送しているものです。
相続人が自ら相続する財産の評価額を計算し、相続税申告が必要かどうか判断するために必要なのです。
このお尋ねを参照して、以下のように決まります。
- 財産額を計算後…
- 基礎控除以下 → 相続税の申告書の提出は不要
- 基礎控除以上 → 相続税の申告書の提出が必要
相続税の申告が必要となった場合には、申告期限までに提出しましょう。
どのような財産が、いくらあるか分からない場合はどうしたらいいの?
銀行などに残高証明書の発行を依頼することで、相続財産の種類や金額を正確に把握できます。
不動産については、固定資産税の納税通知書などで、どこにどのような財産があるか把握することができます。
相続税を安くするにはどのような制度がありますか?
相続税には、税額を減額することができるさまざま制度があります。
- 土地の税額が減額できる「小規模宅地等の特例」
- 相続人の立場や被相続人との関係によって税額が控除される「配偶者の税額軽減」「未成年控除」「障害控除」「相次相続控除」など
これらには細かく要件が定められていたり、さまざまな制度があります。
進めるうえで疑問点など出てきた場合は専門家が在籍している当協会の無料相談窓口へお気軽にご連絡ください。
相続税の申告書をe-Tax(電子申請)で提出する場合、どの税務署に行なうのですか?
相続税の申告書の提出(送信)先は、書面で提出する場合と同様に、被相続人の死亡の時における住所地を管轄する税務署となります。
申告内容によって、相続税の申告書を電子申告できない場合がありますか?
相続税の申告書は、平成31年1月1日以後の相続などにより財産を取得した人の申告からe-Taxにより提出(送信)することができます。
しかし以下の場合は電子申告できないため、書面にて申告する必要があります。
電子申告できないケース
- 10人以上の財産取得者の申告を一度に送信(提出)する場合
- 申告書を提出すべき者が申告書の提出期限前に申告書を提出しないで死亡した場合に、その者の相続人等が申告書等を提出する場合
- 相続時精算課税適用者が被相続人である特定贈与者の死亡日前に死亡している場合に、その相続時精算課税適用者の相続人などが申告書を提出する場合
- 相続税の修正申告書を提出すべき者が相続税の修正申告書を提出しないで死亡している場合に、その者の相続人などが申告書を提出する場合
- 財産取得者が電子証明書を有していない場合(税理士などによる代理送信の場合を除く)
まとめ

本記事では、相続税の申告期限は10ヵ月以内であることを解説しました。
- 10ヵ月は長いように見えて戸籍謄本の取り寄せや手続きであっという間
- 無申告加算税などのペナルティは本税と別にかかってしまう罰金
- 申告期限は納税期限でもある
- 申告期限の延長は原則認められない
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相続が発生してからでは、節税対策などは限定的なものになってしまいます。
ご自身の相続税や税金控除について気になる方は、当協会に連絡してギモンを解消しましょう。
生前から当協会にご相談いただくと、相続税の見込み額を把握し節税対策や納税資金の準備をすることもできます。
専門家在籍の無料相談ですので、申告時に慌てることなく申告準備を進めることができます。
当協会では、税理士や弁護士といった専門家が在籍しているだけでなく、複数の専門家が連携しております。
相続に関するお困りごとがある方は、ぜひお気軽にご連絡ください。





















