2023年12月に空き家対策特別措置法が改正されたことからも分かるように、放置された空き家の老朽化は大きな問題となってきています。
しかしながら、特に築年数の古い空き家は売却がしづらく、
場所によっては活用も難しいため、放置された空き家は未だ多く存在します。
東京都足立区ではこのような現状を解決するために、
空き家を芸術家のためのアトリエとして活用するNPO法人が存在します。
今回は空き家問題解決の糸口となりうるNPO法人「千住芸術村」について紹介していきます。
千住芸術村とは?
千住芸術村は足立区千住周辺にある空き家を、
大学生のアトリエや、若手クリエーターらが活動できるスペースへと再生させているNPO法人です。
一般的に空き家活用はオーナーさんの費用負担によって行われますが、千住芸術村の場合はほとんどの費用を千住芸術村が負担してリノベーションを行います。
部屋に残されている荷物のかたづけ、ゴミ処分、DIY改修、入居者選定、入居後のメンテナンスまで、
オーナーさんの負担なしをモットーに空き家活用を行っており、リノベーションを終えた空き家は主に芸術家の卵(美大生など)に貸し出されます。
「東京都足立区千住地域に点在する空き家・空き店舗、古アパートや老朽ビル等を再生させ、若手クリエーターらが活動する『千住88ヵ所』を作り、歩いて巡れる芸術の街にする。」
「縁ある美大生や若手アーティストたちに、デザイン・広告・出版分野の仕事をつなげ、発表の場を広げるお手伝いをする。」
「ワークショップやダンス、演劇等、各種イベントを企画運営し、縁ある地域の子どもたちが本物の芸術や芸能文化活動に接する機会を提供する。」
という3つのミッションを掲げ、2009年に設立された(2007年から活動はある)千住芸術村は、
現在まで16棟もの空き家を再生しています。
千住芸術村によるリノベーション実績例
オーナーさんの費用負担なしでリノベーションを行う千住芸術村ですが、実際にどのような物件を再生できたのでしょうか?
千住芸術村のホームページをチェックすれば、これまで活用した物件全16棟を確認することができます。
今回はその中の3つの物件を紹介します。
ニコイチハウス
この物件は築50年、約89㎡、2棟1戸(ニコイチ)の物件です。
オーナーさんが美大生に理解のある方で、
東京藝術大学美術学部(絵画科、彫刻科、工芸科)学生6名のシェアアトリエとして再生中です。
芸大生ひとりひとりの個性が各部屋のリノベーションに活かされ、中には「囲炉裏」のある部屋まで存在するようです。
オーナーさんは空き家の改修費事態は負担していないものの、各部屋にエアコンを設置するなど、サポートをしてくれました。
アトリエケルベロス
築50年以上、約116㎡もあるこちらの物件は、
2020年3月に雨漏りのある2階天井部分の一部をはがし、リノベーションが開始されました。
2023年2月に雨漏防水工事が行われ、東京芸術大学デザイン科の学生8名によるシェアアトリエ「ケルベロス」として再生。
学生それぞれのアトリエとして使われるのはもちろんですが、地域住民と交流するための空間としても期待されています。
こちらももともとはオーナーさん負担ゼロの物件でしたが、
風呂やエアコンを新調したり、防犯カメラを新設するなどのサポートをしてくれたそうです。
ととろの家
こちらの物件は築70年以上あり、空き家となってから10年以上たっていて、近隣住民から相談を受けていた物件でした。
建物の柱が既に傾いており、地震が起きたら倒壊しかねない状態であったため、建物の全面を耐力壁で固め、耐震性を確保しました。
2022年3月、リノベーションを完了後は東京芸術大学油画科の学生2名がシェアアトリエとして使用しています。
芸術の街創造を目指す千住芸術村
千住を歩いて巡れる芸術の街にすべく、
空き家を再生し、アトリエを作る活動以外にも様々な活動をしています。
「足立区・ビューティフルウィンドウズ運動」の推進キャラクターのデザインコーディネートや、
北千住駅東口ロータリーでの「コドモーレ!」など、
地元商店街の依頼を受けてイベントの企画運営を行っており、地域住民と芸術をつなぐ架け橋のような存在になっているのです。
再生されたシェアアトリエの中には、期間限定の美術館の会場となっているものもあります。
足立区千住をより彩り豊かな街にする千住芸術村の活躍に、今後も目が離せませんね。