相続税は税金の中でもウェイトがかなり大きく、節税したいと考える人が多いでしょう。
しかし税金の特例というのは手続きや条件が難しいものも多く、使用にあたってハードルを感じる人も多いでしょう。
今回は相続税の節税の中でも割と簡潔で、活用されやすい傾向にある生前贈与について解説していきます。
生前贈与とは
生前贈与とは贈与者が生きているときに財産を受贈者へ贈与することで、相続財産を減らすという節税方法です。
生前贈与で贈与された財産は非課税になるわけではなく、贈与税がかかりますが、
暦年課税制度や相続時精算課税制度を使うことによって控除することもできるので、
全ての財産を相続財産にして相続税を支払うよりもお得になるケースがあります。
贈与税は非課税になる額が決められているものの、難しい条件などはないため、比較的活用しやすい節税対策だと言えます。
生前贈与にご注意!
先述したようなメリットがあるため、相続税の節税をするときは生前贈与という選択肢が真っ先に浮かびがちです。
しかし財産を相続前に渡せば一安心、というわけではありません。
生前贈与には注意すべき点もあり、注意点を知らずに行う生前贈与は、贈与とみなされず税金の支払いが余計に生じることも考えられます。
次項から生前贈与の注意点を解説しますので、きちんと確認し、正しい贈与を行いましょう。
生前贈与の注意点①手渡しや名義預金はダメ
贈与として認めてもらうためには、しっかりとした証拠が必要になります。
必ず受贈者の口座に振り込みを行いましょう。
手渡しですと証拠が残らないので贈与として認められません。また名義預金の場合は贈与とみなされない場合があります。
贈与先となる口座の管理を誰が管理しているのか、という点が贈与と認められるうえで重要であり、
例えば口座の管理を口座名義人の親が行っている場合は名義預金とみなされることがあります。
贈与はきちんと自分名義の口座にしてもらった上で、自身で口座を管理しましょう。
生前贈与の注意点②毎年同じ金額の贈与はしない
贈与税には基礎控除があり、毎年110万円までは贈与税がかかりません。
例えば毎年100万円の贈与を15年行うとすると、総額1500万円の贈与となります。
相続税率が15%だった場合、計225万円の節税となります。
しかし毎年同じ金額を贈与していると、本当は一括で贈与するつもりだったのではと判断され、1,500万円の贈与した財産に贈与税が課税される場合があります(定期贈与と言います)。
こうなると節税できるどころか、約400万円の贈与税を支払うことになってしまいます。
定期贈与と判断されないために、毎年同じ額の贈与をするのは控えましょう!
生前贈与の注意点③贈与契約書を作成する
贈与契約書は贈与の証拠となります。
必ず作成し、保管しておきましょう。
贈与契約書には決まった書式がなく、パソコンで作成しても差し支えありません。
書式は気にしなくて良いものの、以下の事項は必ず記載しなければならないので気を付けましょう。
- 贈与者と受贈者
- 贈与した日
- 贈与財産の種類
- 贈与の条件
- 贈与の方法
なお、不動産を贈与する場合は契約書に印紙を貼り付ける必要がありますので、忘れないようにしてください。
現金、有価証券の場合は不要です。
生前贈与の注意点④生前贈与は早めにスタートすべし!
相続税法に基づき、相続開始前3年以内※の贈与財産は相続判断として判断され、相続税が課せられます。
したがって生前贈与による相続税対策はなるべく早めに行う必要があります。長期間にわたって生前贈与をしていた方が多くの税金を節税できるのです。
※令和9年以降段階的に延長され、令和13年以降は7年以内となります
生前贈与の注意点⑤贈与税は贈与された金額の合計に課税される
複数の人から贈与を受けている場合は注意が必要です。
贈与税は年間の贈与された財産の合計額で課税かどうかを判断されます。
そのため、例えば父親と母親から60万円ずつ、計120万円の贈与を受けた場合は、贈与税の基礎控除110万円を超えた分だけ、贈与税が課税されます。
それぞれの贈与額が110万円を下回っていたとしても、受贈者の受け取り金額が110万円を超えていれば、贈与税が発生するので注意が必要です。
同じ家族内で行う贈与でしたら1人がまとめて贈与した方がわかりやすいかもしれませんね。
贈与には気にすべき点が多い
今回は生前贈与に関する注意点を紹介しましたが、
贈与には贈与額や贈与先など、気にすべき事柄がたくさんあります。
贈与税の支払いが発生するかどうか、納税する必要があるのかどうか少しでも心配な方は必ず専門家に相談しましょう。
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