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あらゆる費用がかかる家の名義変更。
当記事では、相続や贈与で不動産の名義変更をする流れや必要書類、かかる費用を解説します。
相続で家の名義変更をする流れ
大まかに、以下の流れになります。
- 家の名義を誰が持つか決める
- 必要な書類を入手する
- 登記を申請する
まず誰が家の名義を持つことにするか決定
家の名義を取得する人を誰にするか。
まずはこれを決めなければいけません。
家の名義取得者を決める手段には、以下の4つがあります。
- 遺言
- 遺産分割協議
- 調停
- 審判
①遺言
被相続人(亡くなった人)が生前築いてきた財産を誰にどのくらい受け渡すかなどを意思表示することです。
民法で遺言が法律上有効になるために必要なルールが定められており、要件を満たしていない遺言書は効力をもたないとされます。
手続きに使うためにはルールに則った遺言書でなければなりません。
故人が生前、口頭で「私が死んだらあなたに財産をあげる」という口約束はまったく意味をなさないのかというと必ずしもそうとは限りません。
しかし、口頭の約束だけでは有効な遺言とは言えず、希望が叶わなくなる可能性が大きくなるばかりか、かえって親族間の争いの種にもなりかねない一面があります。
築いてきた財産の継承をめぐって身内内でモメないようにしたい、守っていきたいのであれば生前にきちんと公正証書遺言を作成することを推奨します。
②遺産分割協議
有効な遺言書がない場合や、遺言書はあっても誰が不動産を取得するかが定められていなかった場合、法定相続人全員で亡くなった方の遺産をどう分けるかを決める協議(話し合い)のことです。
相続人全員が納得するのであれば必ずしも法定相続分で分ける必要はなく、偏った分け方でもかまいません。
しかし、遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。
多数決ではなく、また、一人でも納得しない相続人がいる場合成立させることができません。
③調停
当人間で遺産分割協議が成立できないとなると、調停へ移行します。
調停、と聞くと何やら物々しい響きに感じられるかもしれませんが、家庭裁判所で調停員立会いのもとで行われる話し合いのことです。
あくまで話し合いの場であり、裁判所が遺産をどう分けるかを決めてくれるわけではありません。
④審判
調停でも遺産の分け方について話し合いがつかない場合、審判へと移行します。
審判では相続人間の話し合いや合意ではなく、相続人それぞれの主張や提出された資料などをもとに、裁判所が遺産の分け方を決める手続きです。
諸事情は多少考慮されますが、原則として法定相続分にしたがい、遺産が分割されることになります。
相続登記に必要な書類を用意する
不動産の取得者が決まったら、必要な書類を準備しましょう。
以下は、遺産分割協議で不動産の取得者を決めた際に一般的に必要な書類と、その解説です。
以下7つが必要な書類となります。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本等
- 被相続人の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産の固定資産税評価証明書
①登記申請書
不動産の名義変更のメイン書類です。
原則として登記申請書に記載したとおりに登記されるため、間違いのないよう正確な記載が必要です。
穴埋め形式ではなく、原則として一から作成しなければならないところが厄介ですが、法務局のページに記載例が書かれています。
これを参考に作成するとよいでしょう。
②遺産分割協議書
法定相続人全員で遺産分割協議で合意した相続遺産の分割内容をまとめた書類です。
名義変更をする不動産を誰が持つことになったかが明確に分かるよう作成します。
相続人全員が協議内容に納得していることの証拠として、全員の実印での捺印が必要です。
③被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本等
被相続人の相続人を確定するために必要です。
それぞれ、被相続人が各時点で本籍を置いていた市町村で入手します。
④被相続人の除票
被相続人の最後の住所地を管轄する市町村で入手します。
被相続人と登記名義人が同一人物であることを示すため、添付します。
⑤相続人全員の戸籍謄本
相続人が存命であることを確認するため、全員の戸籍謄本を添付します。
⑥相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、全員分の印鑑証明書が必要です。
⑦不動産名義取得者の住民票
不動産の新たな所有者となる人の情報を正しく登記するために必要です。
⑧不動産の固定資産税評価証明書
不動産の名義変更でかかる登録免許税算定のために必要です。
不動産の所在地を管轄する市町村で入手します。
市町村により窓口の名前が違いますが、「固定資産税課」や「税務課」などがあります。
状況次第でこれら以外の書類が必要になる場合もあります。
ある程度書類が揃った時点で法務局の登記相談を利用し、書類に不足がないか確認してもらうとよいでしょう。
いざ、法務局へ。登記を申請をする
書類が揃ったら、法務局へ登記の申請をします。
どこの法務局でもいいとうわけではなく、名義変更をしようとしている不動産の所在地管轄の法務局が登記の申請先です。
事前に管轄を確認しておきましょう。
また、登記の申請は法務局の窓口以外に郵送での申請やオンラインでもできますが、このうちオンライン申請は事前準備に手間がかかります。
不慣れな場合はできるだけ窓口での申請がよいでしょう。
微細な不備であればその場で修正できる可能性があるためです。
生前贈与で家の名義変更をする流れ
生前贈与によって不動産の名義変更をする場合、流れは次のとおりです。
- まず贈与内容を決める
- 贈与登記に必要な書類を用意する
- 管轄の法務局で登記を申請する
まず贈与内容を決める
まず、贈与内容を当事者間で決定します。
確定させるべきこととしては、贈与の対象となる遺産や贈与のタイミングなどです。
不動産を生前贈与した場合、原則として不動産をもらった人に対して贈与税が課税されます。
遺産の持ち主が生きているうちに贈与をすることで計画的かつ確実に財産承継ができることはメリットのひとつである一方、
比較的簡単にできる現金や預貯金などの贈与と違い、不動産の場合これがネックでもあります。
不動産は一般的に相続税評価額が大きいため、不動産の生前贈与をすると贈与税が高くなることが多く、もらう側の負担が重くなります。
場合により高額になる可能性もあるため、贈与税についても確認しておきましょう。
贈与登記に必要な書類を用意する
贈与内容が決まったら、必要な書類の準備をします。
贈与での名義変更に際し、贈与登記で一般的に必要な書類は次のとおりです。
①登記申請書
不動産の名義変更のメイン書類です。
前述のように、原則として一からの作成になるため、法務局のページを参考にするとよいでしょう。
②贈与契約書
あげた人ともらった人の間で交わした契約書です。
形式に特段決まりはありませんが、最低限明記する必要がある事柄は以下のとおりです。
贈与者は誰か:住所・氏名を明記
受贈者は誰か:住所・氏名を明記
贈与の日はいつか:何年の何月何日かを明記
何を贈与したのか:不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)を参照に、情報を正しく明記
③登記識別情報
贈与者が不動産を取得した際に発行される、数字や符号の組み合わせでできた12ケタのパスワードのことです。
いわば各不動産ごとの固有パスワードのようなものです。
平成17年、不動産登記法の改正から発行されるようになった書類のため、これ以前から不動産を持っていた場合は発行されません。
その場合は登記識別情報ではなく、権利証を提出します。
◆贈与者の印鑑証明書
発行後3か月以内のものが必要です。
◆受贈者の住民票
受贈者の住民票が1通必要です。
④不動産の固定資産評価証明書
不動産の名義変更に際し、法務局に登録免許税を納めなければなりません。
不動産の固定資産税評価額をもとに算出されるため、評価額を証明する固定資産税評価証明書が必要です。
管轄の法務局で登記を申請
書類が揃ったら、不動産の所在地管轄の法務局で登記を申請します。
費用はいくらかかるか?
不動産の名義変更で必ず発生する費用として、登録免許税と必要書類の取得費用があります。
これとは別に、司法書士に手続きを依頼した場合は司法書士報酬がかかり、また場合によっては不動産を取得した時点で対象となる各種税金もあります。
登録免許税
不動産の名義変更をする際、課税される税金です。
不動産の固定資産評価額 × 税率
で算出されますが、税率は不動産の名義変更が必要になった理由により変わります。
- 相続の場合:0.4%
- 贈与の場合:2.0%
- 売買の場合:2.0%
- 離婚にともなう財産分与の場合:2.0%
例として、固定資産評価額2000万円の家を相続で取得し、不動産の名義変更をする場合、2000万円×0.4%=登録免許税は8万円になります。
しかし、固定資産税評価額が100万円以下の土地の相続登記については、令和7年3月31日までは免税措置があります。名義変更しようとする家の固定資産税評価額が高いと登録免許税額も高くつきます。
なお、登録免許税は現金ではなく、登記の申請書に収入印紙を貼って納めます。(法務局内に収入印紙の購入窓口あり)。
書類取得費用
なかなか侮れない書類コスト。
一枚ごとに取得費用がかかるのが常で、不動産の取得原因(相続、売買など)により内容は変わりますが、登記の申請時に不動産を取得したことを証明するために欠かせません。
とくに相続登記では住民票や戸籍など、役所で入手する書類が多くなり、一枚300円~700円前後のチリツモにより、これだけで5000円~1万円前後かかることが多いです。
相続人の数が多いほど、また被相続人の過去の転籍数が多いほど書類も増え、費用もかさみます。
兄弟姉妹や甥姪が相続人である場合、必要書類がさらに増えるため、さらに1万円程度追加でかかると見込んでおいたほうがいいでしょう。
税金
不動産の名義変更に際し、かかる可能性のある主な税金は以下です。
- 相続税
- 贈与税
- 不動産取得税
- 譲渡所得税
①相続税
遺産を相続したら必ず発生するわけではなく、相続した遺産の総額が相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合にかかります。
そして、相続遺産が基礎控除額を超えた場合、超えた額に応じた税率をかけ、そこから一定額を控除し、最終的な相続税額が算出されます。
税額=(相続税評価額ー基礎控除額)× 税率 - 控除額
②贈与税
原則として年間110万円以上の資産の贈与を受けた場合にかかります。
相続税対策として不動産の生前贈与をした場合でも贈与税がかかります。
贈与税は最高税率55%という高さのため、家の生前贈与をする場合は必ず事前に贈与税額を確認しておきましょう。
③不動産取得税
原則として不動産を取得すると不動産取得税が発生します。
家の名義変更をしてから半年程度で新たに名義人となった人宛てに不動産取得税の納税通知書が届きます。
不動産取得税は次の式で算出されます。
不動産の固定資産税評価額 × 税率
また、税率は取得した不動産次第で変わります。
- 土地または住宅:3%
- 住宅以外の建物:4%
相続によって不動産を取得した場合は、原則として不動産所得税はかかりません。
その他にも軽減措置があります。
④譲渡所得税
不動産を売却し、利益が出た場合などにかかります。
司法書士報酬
相続登記や贈与などの所有権移転登記の手続きは司法書士に依頼することが常ですが、その場合は司法書士への報酬がかかります。
司法書士報酬は自由化されているため、司法書士への報酬額や報酬額の算出方法は各司法書士が自由に定めており、
登記内容などにより多少前後はしますが相場は約7万~20万円前後かかります。
ただし、この相場はあくまで1件の登記申請に対しての報酬です。
司法書士事務所の多くでは、以下要素で報酬額が変わっていきます。
- 登記をする物件数
- 当事者数
- 遺産分割協議書の作成業務
司法書士報酬を正確に知るためには、依頼を検討している司法書士事務所に個別に問い合わせ、見積もりを取るほかありません。
個別事情によっても報酬額が変わることを知っておきましょう。
当協会は司法書士と連携しておりますので、「報酬額の相見積もりをとりたい」といったご要望にもスピーディに回答できます。
おわりに
不動産の名義変更のうち、贈与や相続によるものであれば自力ですることも不可能ではありません。
しかしながらとくに相続となると必要書類だけでも多く、すべてを自力でやることは非常に労力を使います。
家の名義変更にはあらゆる費用がかかります。
使い道がある不動産であればよいのですが、”負動産”と呼ばれてしまうような、持っているだけで負担になる不動産もあるため、相続放棄や売却、もしくは処分をした方がいい場合もあります。
家の名義変更でお悩みの方は、税金や費用について一度私たちにご相談ください。