~この記事は6分で読めます~
- この場合特定空き家に指定されるのだろうか?
- 自分のもっている家も指定されるかもしれない
以上のように、相続で所有した家を空き家対策特別措置法と照らし合わせたとき、不安が出てきます。
家の持ち主になり、特定空き家に指定されることで科せられる罰金や、6倍に跳ね上がる固定資産税のことで気が気ではないという方も多いでしょう。
今回は特定空き家に指定される理由や予防策を解説します。
そもそも特定空き家とは?空き家との違い。
空き家とは長期間にわたり人が住まない、使われていない建物のことですが、「管理不全空き家」と「特定空き家」の二つに分類されます。
空き家かどうかの判断基準は、以下などがあげられます。
- おおむね1年間くらい家屋への出入りがない
- 電気やガス、水道などが使われていない
- 所有者の住所が違う場所にある
しかし、空き家といっても管理が行き届いており、きれいな状態に保たれていれば問題はありません。
街中で庭や全体が荒れ放題の家を見かけたことはありませんか?
以下の参考写真のように、長いこと手入れがされず、ときにゴミ屋敷などといわれる状態になってしまった家屋もあります。
こうした空き家は景観だけではなく、安全面、衛生面、治安面などあらゆる問題を引き起こし、周りに迷惑をかけます。
増え続ける空き家が社会問題となった背景を受け、2015年、施行されたのが「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空き家特措法」)でした。
国がこうした空き家を「特定空き家」として指定し、所有者に改善を求めるための法律を定めたわけです。
さらに2023年には法律が改正されました。
空き家特措法施行後も行政代執行などの措置は増加傾向にあり、市町村の対応に限界があったためです。
空き家特措法改正により、空き家所有者に対して以下対応が強化されることとなりました。
- 市町村が合理化に伴った活用を促進する
- 管理不全空き家を新設
- 「行政代執行」といった特定空家への対応が強化
市町村に特定空き家の所有者への報告徴収権が与えられ、特定空き家への勧告・命令が円滑に行えるようになったわけです。
これまでは裁判所の確定判決が必要だった代執行が、緊急時には手続きをせずにできるようになったことも、大きな改正点です。
これまでは空き家の代執行や費用徴収に手間暇がかかっていましたが、命令以降の動きが早くなります。
改善しなければ過料を徴収したり、解体処分と処分に向けての対応スピードが早くなったということです。
このように、改正により空き家の早期発見と予防、対応強化などが図られています。
特定空き家の1つ前の段階が管理不全空き家といえるでしょう。いわば特定空き家予備軍です。
管理不全空き家と見なされる要因として、以下の点が挙げられます。
- 環境、衛生に悪影響をもたらしている状態
- 安全性が疑われる状態
- 地域コミュニティや不動産価格に悪影響があると見なされる状態
- 犯罪数が増える可能性
倒壊するおそれのある家やゴミだらけの家などは近隣住民だけでなく、地域全体に悪影響をもたらしてしまいます。
こうした家を管理不全空き家と見なすことで行政を介入しやすくし、早期改善を図る目的があります。
しかし、法改正からまだ間もないため、明確な基準は示されていない状態です。
空き家特措法では、以下の状態と見なされる空き家を「特定空き家」と定義しています。
- そのまま放置すると倒壊のおそれなど著しく保安上危険となる状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
これらの条件をもとに、特定空き家の参考イメージをご紹介します。
特定空き家のイメージ写真
管理不全空き家と見なされる要因と似ていますが、とりわけ特定空き家となると単なる空き家では済まない社会的な問題を孕んでおり、特定空き家と見なされるともっと重い罰則を科せられます。
特定空き家は誰が決めるのか?
先に述べた「倒壊のおそれ」「衛生上の問題」「治安の問題」「周りへの影響レベル」などを考慮して、市町村(地方自治体)が判断します。
各市町村は空き家特措法に基づき、「空き家等対策計画」を作成します。
現在、全国の市町村のうち8割以上の市町村で対策計画が策定され、以下の事項をさだめています。
- 空き家の実態調査方法
- 利活用の促進
- 特定空き家に対する措置
- 住民からの相談対応
対策計画に基づき、各市町村は空き家を調査し、実態把握を進めていきます。
特に問題のある空き家を発見すると特定空き家に認定するというわけです。
特定空き家指定後のプロセス
特定空き家に指定されると以下のプロセスを辿り、事が進んでいきます。
- 空き家の調査
- 特定空き家等に指定
- 助言や指導
- 勧告
- 命令
- 行政代執行
特定空き家に指定されると、まず市町村は所有者に空き家を適切に管理するよう助言や指導を行ないます。
それでも改善が行われない場合、市町村は書面で勧告をし、勧告を受けると空き家の敷地は翌年から税金の特典を受けられなくなります。
勧告をしてもなお改善がされない場合、勧告された内容を実行するよう命令が出されます。
空き家所有者が命令に従わず、対応をしなかった場合50万円以下の過料が科せられることになります。
命令を出されてもなお特定空き家の状況が改善されない場合、ついには市町村が行政代執行ができることになります。
行政代執行とは特定空き家の持ち主に代わり、市町村が強制的に家の解体などをし、その費用を持ち主から徴収することをいいます。
なお、行政代執行に加え、空き家等特別措置法では「略式代執行」も認めています。
略式代執行とは、特定空き家の持ち主が不明な場合や、持ち主は分かってはいるが連絡が取れない場合などに、市町村が特定空き家の解体などをすることです。
これは、緊急性があるにもかかわらず特定空き家の所有者が分からいために解体ができないことにより周辺に損害を与えることがないよう、行われます。
道路に張り出し、越境している木の枝などを切ったり、放置されているゴミを撤去したり、倒壊しそうな家を解体できるというわけです。
家の持ち主に何度も改善を要求しているにもかかわらず持ち主が対応してくれない場合、市町村が強制的に敷地内に立ち入り、必要な措置をするというものです。
こちらから国土交通省の資料にて代執行の事例がご覧いただけます。
これらの適正管理は本来、空き家所有者の責任です。
行政代執行がされるのは緊急性が高いと判断された時のみで、その費用は家の持ち主に請求されることになります。
「放置しておけば市町村が勝手に何とかしてくれるだろう」と考えるのは間違っています。
行政代執行は、空き家の持ち主にとって何のメリットもないからです。
関連コラム
指定後本当に固定資産税が6倍になるのか?
インターネットで少々調べるだけでも、空き家の放置で税金が6倍という情報を目にします。
これは一体、どういうことなのでしょうか?
通常、不動産を持っていると毎年固定資産税がかかりますが(市街化区域内にある土地には都市計画税も)、これは人が住まない空き家も同じです。
居住者がいる・いないに関係なく、不動産を持っていると税金がかかります。
それが固定資産税や都市計画税ですが、いずれも家や土地などの固定資産を持っている人に課せられる税金で、
各市町村が税額を算出し、不動産の持ち主に納税額を通知します。
- 固定資産税
- 課税標準額(固定資産評価額)×1.4%(標準税率)
- 都市計画税
- 課税標準額(固定資産評価額)×最高0.3%(制限税率)
これらの固定資産税・都市計画税について、「固定資産税等の住宅用地特例」制度により税金が安くなります。
住宅用地特例の条件は「住宅が建っていること」であるため、空き家もこの軽減措置の対象となります。
しかし、特定空き家に指定されて前述の勧告を受けると、翌年からこの特例措置がなくなってしまい、土地は「非住宅用地」として課税されることになります。
固定資産税が約4倍、都市計画税も約2倍に跳ね上がってしまうのです。
空き家が特定空き家に指定されたあとに市町村から勧告を受けると、「住宅用地の特例措置」の対象から外され、固定資産税の優遇措置が適用されなくなる関係で固定資産税額がおおよそ更地状態と同等のMAX6倍になる場合があります。
これが、よく見聞きする「空き家の放置で税金が6倍」という情報の正体です。
住宅用地の特定措置が適用されるかされないかでは固定資産税額が大幅に変わるため、ご注意ください。
特定空き家に指定されないために
空き家を特定空き家に指定されないためには、以下のような手段があります。
①住んでくれる人を探す
まずは、家族や親族の中に誰か住んでくれる人がいないか確認します。
誰も住まない空き家は手入れもされず、人が住んでいる家屋よりも早く傷んでいきますが、
誰か人が住むことで適切に管理されることにより、傷んでいくスピードにブレーキをかけることができます。
②活用する
空き家をそのまま活用する方法としては、借家や民泊、シェアハウス物件にするなどがあります。
しかしながら空き家は元々古いため、活用するためには大きなリフォームコストが必要になる場合も多々あります。
このため、あまりコストが高くかかりすぎると、リフォーム代が回収できないおそれもあります。
リフォームをしない代わりにDIY賃貸など安い家賃で入居者に貸し、入居者が自由にリノベーションなどができるようにする方法もあります。
③売却する
空き家を持っていても将来的に誰かが住んだり活用する予定もない場合、売ることも一つの選択肢になります。
とはいえ長年暮らした思い入れのある持ち家のこと。
売るとなるとさびしい思いをするかと思いますが、空き家を所有しつづけるためにかかる維持費や負担がなくなり、特定空き家に指定されることも防げます。
④解体で更地活用も
空き家の維持管理費が重くのしかかり、活用も難しい場合、解体も選択肢になります。
解体の大きなメリットは家自体の管理をする必要がなくなることです。
解体後は建て替えて活用するか、更地にして駐車場や貸コンテナなどで活用する方法もあります。
しかし空き家を解体してしまうと、前述の住宅用地の軽減が受けられなくなることにより、固定資産税や都市計画税が大幅に跳ね上がってしまうため、事前の解体後の活用計画をよく見極める必要があります。
解体のデメリットは、なんといっても解体費用の負担です。
建物の面積や構造により違いますが、木造2階建て、30坪程度の建物の解体費はおよそ120万~200万前後かかります。
家の構造や面積のほか、敷地の広さや道幅、アスベストの有無などあらゆる条件でコストが左右されるため、複数の解体業者で見積もりを出してもらうことを推奨します。
また、空き家の解体費用の補助金制度がある市町村もあります。
市区町村により「空き家除去補助金」「老朽危険家屋除去費等助成金」など名前はさまざまですが、要するに空き家の解体費用を助成してくれる補助金で、適用条件や金額も違います。
すべての市町村に助成制度があるわけではないため、事前にお住まいの市町村で制度の有無や適用条件などを確認しておくと良いでしょう。
東京都内の助成金はこちらのシリーズでご紹介しています。
一方、建て替えて活用する場合にはアパートやマンションなどの物件、貸店舗などがあり、建て替えにより収益が上がることも期待できますが、
これらも入居需要があるのか、借り入れの返済にどれくらい余裕があるかなど、現実的なリスクも踏まえた上で事前に入念に経営計画を立てておかなければいけません。
関連コラム
おわりに
思い入れのある自分の大事な家が特定空き家に指定され、果ては罰金まで取られるのは悲しいことです。
空き家の管理に困ったら、早い段階で私たちにご相談ください。
持ち家が特定空家や管理不全空き家に指定される可能性があるか、無料の現地調査も承っております。