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誰しも少なからず考える老後資金問題。
生活費とは別に、介護費用がいくらかかるか、実態の想定はしているでしょうか。想定より早い段階で必要になる場合もあり、いずれは必要を考えることになるかもしれない介護・・・
しかしいったいいくらになるのか具体的につかめないため、漠然と不安を感じる方も多いのではないでしょうか?
本記事では介護費用の実際や、どう賄うかについて解説します。
介護費用の平均
はじめに、気になる介護費用の平均を見ていきたいと思います。公益財団法人生命保険文化センターが行った調査では、月々の介護費用平均は8万3千円という結果が出ています。
別途、住宅を介護しやすいようリフォームしたり、介護用ベッドを買ったりという一時費用の平均が74万円、介護期間の平均が5年1か月という結果が出ています。
介護費用+介護期間の平均で計算すると、平均的な費用の総額は次のような結果になります。
(月額費用8.3万円×12か月×5年)+一時費用74万円=572万円
ということで、介護費用の総額は軽く500万超えしてしまうのです・・・!
これはおそるべき金額です。もちろん介護を必要とする状況は人の状況によって変わり、あくまで算出された平均値にすぎませんが、
いったん介護が必要な状況になると公的な介護保険制度があったとしてもこれだけの大金がかかる可能性が生まれることは念頭に置いておきましょう。
日本人の平均寿命が年々長くなっていることを踏まえると、介護期間はさらに伸びる→必要なお金もさらに増えるため、自分が元気に動けるうちにあらかじめ備えておくことが重要になってきます。
参考:公益財団法人生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」より
もう少し具体的な問題点。どう賄う介護費用?
次に、具体的にどれくらいの資金があれば賄えるか。もう少し具体的な問題点を見ていきましょう。
預貯金が相当潤沢にある場合は話は変わりますが、内閣府による平成29年版高齢社会白書によりますと、世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄額の中央値は1,592万(およそ1,600万)とされていることからも、決して十分な老後資金とはいえないでしょう。
介護に必要な年間費用を算出したとしても、それ以外にも状況により別途必要な出費が諸々発生します。
年金収入だけがメインの収入源で賄えない場合、預貯金を切り崩す必要が出てくるため、老後資金はさらに少なくなっていきます。
親の介護をする見込みの子どもたちが、極力親の資金だけで費用を賄いたいと思っていても現実的にはそうそううまくいかず、悩ましい問題に頭を痛めるのではないでしょうか?
自宅売却で介護費用ねん出という手も
それでは足らない介護費用をどうするか?という問題に直面しますが、ここで検討できるのが親の自宅(実家)の売却です。
親が介護施設に入る、もしくは離れて暮らしている子どもたちと同居するとなると親の実家は空き家になります。
住む家によっても異なりますが、一般的に持ち家の維持費用は年間35万円ほどといわれます。
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光熱費や固定資産税、火災保険などの合計額で、持ち家の維持管理費はなかなか高くつきます。先々のリフォームや修繕のためのコストや、住宅ローンの返済などは含みません。
持ち家を使わない場合、売って介護資金に充てることも検討の意味があるでしょう。
介護スタートの時点で持ち家を売却したほうがいい理由
近年では高齢化社会を迎えるにともない、介護をきっかけとした持ち家の売却も増えてきました。
しかし売却のタイミングを誤るとコスト面で不利益が出るおそれがあるため、売却の判断は慎重にする必要があります。
次に、介護がはじまる時点で持ち家を売却した方がいい理由を解説します!
売却で得た資金を介護費用に充てられる
この恩恵は大きいといえるでしょう。
介護がスタートするタイミングで持ち家を売却することにより、大きな介護費用を賄えます。
入る介護施設によっては、入所一時金に100万単位(施設によっては1000万単位の場合も)が必要になります。
持ち家の売却で大きな資金を確保することにより、入れる施設の選択幅が広がることもメリットです。資産を有効活用できる点で、介護がスタートする時点での持ち家売却は有効な手だてといえそうです。
家の維持管理費がかからなくなる
先に、なかなか重くのしかかってくる家の維持費について述べましたが、不要な持ち家の売却はこの維持費カットにもつながります。
介護がはじまる時点で持ち家を売ってしまえば、前述の固定資産税や保険料などを削減できます。
誰も住まない家はそれだけで傷みやすくなり、放火や空き巣、不法占拠など犯罪を誘発するリスクもあります。
活用されるあてもなく、はっきりした目的のない持ち家の所有は得策とはいえません。
介護費用のコストカットをねらう意味からも、介護スタート時の持ち家売却は検討する意味が大いにあります。
時間がたつほど親の認知症発症リスクが高まる
親が高齢になればなるほど、認知症のリスクも高まってきます。
認知症になると売買契約の有効な締結がむずかしくなるため、認知症になっている本人が所有する持ち家を売るのは苦労が要ります。契約の締結に必要な意思能力が否定されるからです。
すでに認知症になってしまった場合、成年後見制度を使って持ち家を売る方法もありますが、時間もかかる上、制度を利用したところで必ずしも家を売却できるとはかぎりません。不動産の売却には、家庭裁判所の許可が必要であるからです。
このため、認知症リスクについてはさらに敏感であるよう努めながら、持ち家の売却で得たお金を介護費に充てる計画を立てなければいけません。
空き家のまま放置すると税金が上がることも!
持ち家を売らず放置すると、自治体からこれ以上の放置は問題があると判断され、「特定空き家」に指定され空き家るおそれがあります。
「特定空き家」に指定されると、空き家に対する自治体からの立ち入り調査や指導、勧告、撤去命令などを受けるようになります。
家の所有者が自治体からの勧告や指導に従わなければ50万円以下の過料が科せられ、それでも従わない場合、行政代執行で自治体が家を撤去することができます。
結果的に固定資産税も値上げされ、そうなると通常の3~4倍にもなる増税を覚悟しなければいけなくなります。
何かと末恐ろしいリスクもともなう持ち家の放置です。
こうしたリスク回避の観点からも介護スタートの時点で持ち家を売却してしまえば、空き家にしなくて済みます。
親の認知症進行具合と意思能力の有無に注意
親の介護をしつつ、ゆくゆく持ち家の売却をお考えの方は、親の意思能力の有無にお気をつけください。
認知症が進んで意思能力が否定されると家の売却がむずかしくなるからです。仮にできたとしても想定以上にかかる時間や手間で苦労します。
認知症によるリスク回避の一環として、早期売却が考えられます。しかしながら親の意向により、今すぐには持ち家を売れない場合もあるでしょう。その際は柔軟な家の処分ができるよう、家族信託の検討をおすすめします。
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親に家の売却の話を切り出すのは気まずく、先送りにしてしまいがちです。しかしながら今後意味のあるセカンドライフを送るためにも、家を売る準備は少しでも早めに取りかかるのが得策です。
東京空き家協会では相談者のご状況やご希望を整理し、税理士や司法書士、弁護士などの専門家とも連携して事が進むよう、相談を受け付けています。
持ち家の売却や家族信託を考える場合、考えがまとまっていなくても相談することができるので、助言や提案を受けながら事を動かしていきましょう! ↓ ↓ ↓