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管理も処分も非常に面倒な空き家。
かといって放置すれば固定資産税が6倍になると聞き、所有者の中には不安を抱く方も少なくありません。
必ずしも負担が大きくなるわけではありませんが、引き上げられる可能性があることは頭に入れておかなければいけません。
税金はいわば無知への罰金でもある通り、
- 空き家の固定資産税がいつから最大6倍になるのか
- それを防ぐ方法があるのか
気になる方は本コラムをご一読ください。
空き家にももれなくかかる税金
行政が取れるところから取る「税金」は、空き家にももれなくかかってきます。
誰も住んでいない空き家であれ、不動産を持っていることに変わりはないため、固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。
それぞれ以下の税率が適用されますが、一定の要件をクリアすると特例措置で税負担を軽減できます。
- 固定資産税は課税標準の1.4%
- 都市計画税は課税標準に各自治体ごとに決められた税率
悩ましいことに土地や家を持っているとそれだけで税金がかかりますが、同じ不動産でも住宅用地は「住宅用地の特例」という制度により、固定資産税と都市計画税が軽減されています。
この特例は、小規模住宅用地(住宅やアパートなどの敷地で200㎡以下の部分)の場合、以下のように減額します。
- 固定資産税が6分の1
- 都市計画税が3分の1
一般住宅用地(住宅やアパートなどの敷地で200㎡を超える部分)の場合は以下のように減額されます。
- 固定資産税が3分の1
- 都市計画税が3分の2
計算式はそれぞれ以下のようになっています。
固定資産税の計算式
住宅用地の区分 |
固定資産税 |
都市計画税 |
小規模住宅用地 |
課税標準×1/6×1.4% | 課税標準×1/3×0.3% |
一般住宅用地 (200㎡超の部分) |
課税標準×1/3×1.4% | 課税標準×2/3×0.3% |
持っている空き家が特定空き家や管理不全空き家に指定され勧告を受けた場合は以下流れとなります。
- 上記の特例措置の対象から外れる
- 軽減措置を受けられなくなる
- 税負担が大きくなる
そして、空き家につきものの税金といえば相続税。
「なぜ自分の実家を相続するのに税金を払わなきゃいかんのだ。自分の実家なのに・・・」
というリアル不満噴出テーマの最たるものとして、相続が発生した場合、亡くなった方(被相続人)の遺産の総額によっては相続税が生じる可能性があります。
遺産には不動産、現金や預貯金、証券といったプラスの財産のほか、借金やローンなど負の遺産も含まれるため、受け継ぐ側はたまったものではありません。
相続税は遺産の総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出した基礎控除を上回るときに生じます。
相続税が生じる場合においては、相続の発生を知った日の翌日から10か月以内に相続税を申告し、支払わなければいけません。
空き家の固定資産税、MAX6倍になるタイミング
結論からいえば、空き家の固定資産税が最大6倍に引き上げられるタイミングは行政から勧告を受けた翌年からです。
2023年12月13日、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家等対策特別措置法)」が改正されました。
空き家の固定資産税が最大6倍になるのは、今に始まったことではありません。
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、適切な管理がされず、倒壊するおそれの高い空き家が「特定空き家」に指定された場合、固定資産税が最大6倍になるという定めでした。
「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が話題になりましたが、この新たな法律案には「管理不全空き家」に指定された場合でも固定資産税が最大6倍になるという改正が加わっています。
管理不全空き家とは、適切な管理がされておらず、放置されることにより将来特定空き家に指定される可能性が高い空き家を指し、いわば特定空き家予備軍(前段階)です。
法案の施行後、即、すべての空き家が対象になるというわけではありませんが、条件に該当した日には固定資産税が跳ね上がるため、事前に確認が必須です。
背景には日本において広がりつづける空き家増加の社会問題があり、総務省の「住宅・土地統計調査」によると、二次的利用、賃貸や売却用住宅を除いた長期にわたり不在の住宅などの「使用目的のない空き家」は349万戸と、1988年~2018年の20年でおよそ1.9倍に増加したといいます。
空き家が増えている原因として、少子高齢化や都市部への人口集中による影響、日本の人口減少、高度経済成長期と現代の経済成長率のギャップによる影響などがあります。
また、実家を相続したものの、遠方に住んでいて管理が難しく放置している場合や、単に解体費用がかかるためとりあえず放置してしまう場合などもあります。
さらには更地にすることで税金が高くつくという税事情も、空き家の増加傾向に拍車をかけています。
H3.”6倍Xデー”は、じわじわとやってくる・・・
そしてその固定資産税6倍エックスデーは、じわじわやってきます。
とはいえ、自治体に特定空き家に指定されたからといって即、固定資産税が6倍になるわけではありません。
これには段階があり、特定空き家への指定後も自治体から改善のための助言や指導がされ、それに従わない結果「勧告」が行われると、その翌年ついに固定資産税が6倍になることになっています。
空き家の実態調査~行政代執行までの流れ▼
空き家の調査→特定空き家に指定→助言・指導→勧告(住宅用地特例の対象から外れる)→命令(命令に違反すると50万円以下の過料)→行政代執行
まず自治体による空き家の調査が行われます。
調査の結果、問題があると見なされた空き家は、自治体から特定空き家、管理不全空き家の認定を受けます。
次に助言・指導です。
特定空き家、管理不全空き家に認定されると、自治体から空き家の適切な管理を行うよう、助言・指導がされます。
これにより状況が改善されれば認定は解除されます。
改善がされない場合には、追って「勧告」がされます。
この時点で住宅用地特例の対象から除外され、軽減措置の対象にならなくなります。
プロセスを追うごとに段階的に厳しくなっていき、特定空き家の場合さらに放置すると「命令」に切り替わります。
従わない場合50万円以下の過料が科される厳しい現実が待っています。
過料とは行政上の罰則のことをいい、空き家特別対策措置法上の罰則です。
前科はつかないとはいえ、固定資産税の増加だけでなく直接的な金銭のペナルティとなるためこれは痛いです。
そして、ついには行政代執行。
最終的な罰則がこれです。
特定空き家の場合、行政代執行により、自治体が空き家の取り壊しを実行します。
しかも恐ろしいことにその解体費用は所有者宛てに請求されます。
「放っとけば役所が費用負担して解体してくれるだろう」とはならないため大間違いです。
むしろ自分で解体するよりも高額になる場合もあるため、所有者にとってまったくメリットがないといってもいいでしょう。
さらには納付期限までに解体費用を払えない場合、空き家の持ち主は不動産や車などの財産を行政に差し押さえられるハメになります。
また、そればかりか給与も毎月手取りの4分の1までが差し押さえの対象となります。
借金取りより怖い話ですが、ひとたび行政代執行で空き家の取り壊しがされてしまうと、愛着のある住み慣れた家をはじめ多くの財産を失い、その後の人生の多大な時間をかけて解体費用を支払い続けるハメにさえなりかねないということです。
「法的にはそう定められているだけで、実際にはそうそう差し押さえなんかされないだろう」と高を括っている方もいるかもしれませんが、決してただの脅し文句ではなく、行政代執行の解体費が払えず実際に財産差し押さえになった事例はたくさんあります。
解体費用が高いから払えない、もしくは払いたくないからといって自己破産したところで支払い義務から逃れられないという意味では国は消費者金融より怖いともいえます。
税金同様、行政代執行による解体費は国による強制徴収が認められているからです。
強制徴収とは、税金などの滞納者に対し、国や自治体が強制的に滞納者の財産を差し押さえ、滞納している税金などに充てる手続きのことです。
さらに破産法252条により、強制徴収が認められた請求については自己破産しても支払い義務は残ると定められています。
自己破産しても支払い義務から逃れられないのであれば、実際払えない場合どうなるかというと前述のように持ち主の給与や財産が差し押さえられるというわけです。
「勧告」の対象となった場合、自治体から書面での通知が来るため、見過ごさないようにしなければなりません。
そもそもそんなことにならないよう、「助言・指導」の段階から対応しておきましょう。
特定空き家に指定されてから勧告が行われるまでの間に行政の改善要求に従い、空き家を修繕すれば行政代執行処分までいくことはありません。
H3.自治体により異なる管理不全空き家の条件
自治体により、管理不全空き家に該当する具体的な基準はさまざまです。
各自治体が、国が定めたガイドラインに沿って定めています。
たとえば東京都大田区では、特定空き家の基準を大まかに次のように定めています。
(1)そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(2)そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(3)適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(4)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
これらのいずれかに認められる空き家等を指しています。
そしてその下には全章でも解説したプロセス・・・特定空き家と見なされた場合の行政代執行までのプロセスも書かれています。
さらにこれに基づき、勧告を受けた翌年、追ってじわじわやってくる「固定資産税Xデー」。
H3.情報社会におけるリスクも
また、行政代執行による空き家の解体は、自分自身の社会的信用も失くすおそれさえあります。
なぜなら空き家の取り壊しは、増加の一途をたどる空き家放置問題への社会的関心や注意喚起を促す意図でクローズアップされ、報道されることも多いからです。
いまの情報社会において、ひとたびニュースで報道されようものならたちまちテレビやネットの記事などで空き家の画像が拡散され、瞬く間に世間の思いもよらない人たちのところまで晒されることになります。
場合によっては相当な影響力を持ち、近隣住民など空き家の所有者があなたであると知っている人たちがそうした画像を目にするかもしれません。
もしそうともなるとそうした人たちからのあなたの信用度は落ち、「ええっ、あの人が!?」と見る目も変わってしまうでしょう。
とりわけ状況次第ではテレビよりもネットの方が波及力・影響力が大きいことも珍しくありません。
近隣住民など空き家の所有者があなたであることを知った誰かが興味本位などからネットであなたの個人名や住所といった個人情報を晒す可能性もあります。
悪意のある人が発信ひとつであなたを悪者に仕立て上げることすらできるのです。
発信者の情報発信のし方次第で、あなたは不特定多数の人たちから「あの人は法律を守らなかったから周りに迷惑をかけて行政処分を食らった人だ」として周知されてしまう可能性すらあります。
こうなっては社会的に暮らしにくく、居づらくなってしまうでしょう。
世界のいつどこで何が起きているのかが瞬時に分かるネット社会といい、いつでも、誰でも、どこでも情報の出し入れができるいまの情報社会では、こうした事態にも発展しうるのです。
固定資産税6倍を防ぐ方法
固定資産税MAX6倍にもなってはたまったものではなく、こんなことにならないに越したことはありません!
最大6倍になるのを防ぐ方法として、以下が挙げられます。
- 市区町村から「管理不全空き家」や「特定空き家」 で受けた指定を改善する
- 貸し出す
- 売る
- 解体し更地にする
まずは受けた指定を改善
まずは受けた指定を改善することからです。
繰り返しますが、自治体に管理不全空き家や特定空き家に指定された=
即、固定資産税最大6倍に引き上げではありません。
指定されたあとに行政の助言・指導に従わず、勧告を受けた場合に引き上げられます。
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日が基準日です。
そのため、もし特定空き家に指定されても助言や指導に従い年内に改善すれば指定から外され、住宅用地の特例を受けることができます。
しかしながら改善には多額のコストもかかるというデメリットがあります。
特定空き家に指定されている時点で老朽化が相当進んでいるはずですので、修繕箇所たるや空き家全体に及ぶ規模になっているでしょう。
行政の改善要求に沿った状態にするためには大掛かりな修繕をすることになります。
改善要求に応じる場合はゆくゆく空き家を使う予定があり、修繕コストをかけてでも残したい人向けといえるでしょう。
修繕費は、空き家を仮に一軒丸ごと修繕しようものなら平均約300~800万近くかかります。(老朽化が激しければ解体費用より高くなることもあります)。
しかも、一度コストをかけて修繕したら「終わり」ではありません。
空き家を持っているかぎり管理し続けなくてはいけないことがついて周るためです。
あちこち老朽化が目立つ家ほど、身内内で「この家は金がないと住めないんだよ」という現実話が上がることも多いように、
今後も空き家が老朽化するたびにその都度修繕コストがかかり続けることになります。
そして必要な管理を怠ればまた行政に特定空き家に指定され、行政代執行のリスクに晒されることになります。
「改善しようかどうしようか」悩んでいて対応が遅れ、解除されたのが1月2日以降になった場合はその年の固定資産税と都市計画税は住宅用地の特例を適用できないため、ご留意ください。
関連コラム
貸し出す
固定資産税最大6倍リスクを回避するためには、空き家を賃貸に出すという選択肢もあります。
賃貸に出し、入居者を確保できれば空き家として見なされなくなるため、管理不全空き家や特定空き家に指定されなくて済むでしょう。
賃貸にする場合、家賃収入が得られるメリットがあるほか、家自体の評価額が高くないことから、贈与税や相続税も軽減できます。
ただし、老朽化が進んでいる場合は貸し出せる状態にするための修繕費がかかります。
補助金を受けられる可能性もありますが、費用負担が生じるため、コストをかけてでも賃貸経営をしたい人向けの選択といえるでしょう。
売る
「売る」と口で言うのは簡単ですがいざ家を手放すとなると抵抗を感じる方も多い選択肢です。
固定資産税や都市計画税を支払うのは、家の所有者です。
管理不全空き家や特定空き家に指定され、勧告を受ける前に空き家を売ることができれば固定資産税の引き上げに気を揉まずに済むでしょう。
管理不全空き家や特定空き家に指定される=倒壊のおそれや著しく保安上危険となるおそれがある状態です。
売却を考えていてもこれらに指定されるような物件は買い手が見つかりにくく、空き家になった時点で速やかに売却した方が賢明でしょう。
空き家を売った場合、ゆくゆく負担する固定資産税、都市計画税を軽減でき、まとまったお金を手に入れることができます。
一方で、慣れ親しんだ家を手放すことに抵抗がある人も少なくありません。
売る選択は家を手放すことを前向きに捉えることができ、まとまったお金を手に入れたい人向けといえるでしょう。
解体し更地にする
特例措置が適用されなくなるため、解体して更地にした場合は固定資産税の負担が最大6倍になってしまいます。
しかし一方で、家を取り壊したことにより家に対してかかる固定資産税・都市計画税の支払いから解放されます。
場合により、解体して更地にした場合次の建物が立てやすい状態のため土地の売却が進めやすくなることがあります。
また、駐車場や資材置き場としてレンタルし、賃料を得ることもできます。
しかし解体の際は解体費用がかかるほか、更地にしてから駐車場や資材置き場として貸し出す際は固定資産税の負担が大きいままである点は念頭に置く必要があります。
解体費用の補助金を受け取れる可能性もありますが、まず解体コストの負担が生じるため、
コストをかけて更地にすることで何らかのメリットがある人向けの選択肢でしょう。
「更地にしたあとに活用できるか・需要があるか」気になる方も、専門業者と多数連携している当協会へご連絡ください。
どこでもよくない業者選び
固定資産税や都市計画税はその家を使っているかどうかに関係なく、1月1日時点の家の持ち主に対してかかります。
現実問題としてあとあと「こんなに支払うことになるとは知らなかった・・・」とならないためにも、空き家であろうとも固定資産税や都市計画税がかかることは認識しておいてください。
適切な管理が行われておらず、行政から管理不全空き家や特定空き家に指定されて助言や指導に従わなかった場合は勧告を受け、特例措置を受けられなくなります。
固定資産税の負担がMAX6倍になるなどたまったものではありません。
そのような事態を防ぐ手段を解説しましたが、もっとも現実的なのは空き家専門窓口へ相談することです。
当協会は複数の専門家と連携している、空き家をふくめた物件をお持ちの方のためのサポート窓口です。
以下のご相談をワンストップで承っており、ご相談者様にさまざまな選択肢から最適なプランをご提案いたします。
- 相続
- 空き家活用
- 片付け・清掃
- 売却・買取
- 改修・建て替え
- 管理代行
- 解体
「これから相続したいと考えている」
「家を相続したはいいけど、今後について決めかねている」
「放置している空き家があり、早く対処したい」
このような方は、まずはお気軽にご連絡ください!